『セルラー』

セルラー
(CELLER)
2005/CS
(2005/3/5 TOHOシネマズ高槻/SC6)

感想(旧HPより転載)

 突如何者かに誘拐された女教師(キム・ベイシンガー)は破壊された電話機を修復して外部に助けを求める。たまたま携帯電話に出た青年(クリス・エバンス)は、回線を遮断しないように注意を払いながら、彼女の息子を悪人たちの手から守るために学校に急行するが・・・

 ジャンル映画の古参ラリー・コーエンが「フォーン・ブース」とワンセットで思いついた脚本をもとに若手ライターが書き直したものらしいが、実に小気味良い軽サスペンス映画に仕上がっている。携帯電話の電波が途絶しそうになったり、バッテリーが切れそうになったりといったお馴染みのシチュエーションを痛快に解消しながら、キム・ベイシンガーの懇願に応える形で大活躍するうちに軟派な青年がヒーローになってゆくという、よくできたジェットコースター型映画である。

 サスペンス、アクション、配役、演技と粒が揃っており、小味の効いたアイディアの釣瓶うちが実に心地よいリズムを生み出している。主演のクリス・エバンスは冒頭のいかにもお頭の悪そうな(おまけに裸だ)シーンから、次第に生気を帯びてくる様子が活写されており、一番の儲け役。実際、今後の飛躍が期待できそうな好漢だ。

 一方、退職を控えた地味な警察官がW・メイシーというのも味のある配役で、後半の大活躍が痛快。この俳優の安定感のある演技力に金魚を小道具として組み合わせた演出のセンスも貴重で、デイヴィッド・R・エリスという第二班出身の監督はなかなか侮れない男らしい。ゲイリー・カポというやはり第二班担当出身のキャメラも、ビーチのピーカンの光と監禁された屋根裏部屋のコントラストの効いた闇の世界の照明の対比が明確で、実に的確な仕事ぶりだ。

 ただ、クライマックスに投入されたアイディアの大きさがそれまでのものと比べて際立っていないというバランス配分の悪さは減点対象だろう。

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