基本情報
怪獣総進撃
1968/CS
(2004/9/10 レンタルDVD)
脚本/馬渕薫、本多猪四郎
撮影/完倉泰一 照明/平野清久
美術/北猛夫 音楽/伊福部昭
特技監修/円谷英二 特技監督/有川貞昌
監督/本多猪四郎
感想(旧HPより転載)
個人的にこの映画でもっとも気になる、というか気に障るのは、カラー撮影の色彩設計である。
有川貞昌のミニチュアワークについては、東宝特撮よりも、テレビの円谷プロ特撮にレファレンスがあるように思われ、最も力が入っている東京襲撃シーンでも、一部を除いてビル街のディテールの省略や質感はテレビ特撮の割り切り方に似ている。また、有川特撮の魅力である緻密な合成カットを多用した映像構成も希薄で、「ゴジラの息子」で出色だった有川演出の長所があまり見られない。
そうした不調に加えて、原色を多用した本編の美術設計が非常にチープで、特に月面基地はある種サイケにも見えるほど赤や青や緑の原色が氾濫している。一方、地球を象徴するカラーは黄色で、SY-3の搭乗員のコスチュームからして真黄色というド派手さ。
さらに罪深いのは、特撮セットでも黄色が多用され、クライマックスの富士の裾野も枯れ草の色彩が主調となっているし、キラアク星人のドームが埋まっているのも関東ローム層の赤土の中である。それまで意図的に回避され、そちらかといえばモノトーンを基調としてきた東宝特撮が黄色を基調とする暖色系にはっきりとシフトするのは、この作品以降であろう。
しかし、それも中野昭慶の「日本沈没」により黒と赤が色彩の基調となる東宝特撮の新たな時代を迎えるまでの極わずかな期間に過ぎなかったのだ。