感想(旧HPより転載)
隣藩の暴虐な藩主(菅貫太郎)に藩士を殺害されたのみならず藩自体を乗っ取ろうとする画策のあることを知った家老(南原宏治)は幕府の老中(佐藤慶)に対する嘆願を開始するとともに、密かに決死隊を組織して隣藩の藩主暗殺の準備を整えるのだった。だが、隣藩の家老(大友柳太朗)もまた老中に対する工作活動で窮地を脱しようとしていた。
決死隊に加わるのが夏八木勲、西村晃、汐路章等といった面々なのだが、「十三人の刺客」で掘り当てた鉱脈を忠臣蔵風にアレンジした安定路線の芽生えが見受けられ、「大殺陣」の荒々しい興奮からは数歩後退している印象を拭えない。伊福部昭の劇判も「十三人の刺客」とは異なり、怪獣映画のスコアをそのまま流用した部分が多く、これも意欲の後退をうかがわせる。
「十三人の刺客」では剣客をシリアスに演じた西村晃が武士らしい活躍の場を求めて決死隊に参画する浪人を軽妙に演じているが、この人物の位置付けが今一つ明瞭でなく、最後まで正気で生き残る重要な役だけに、訴求力を欠いている。
南原宏治も「十三人の刺客」の内田良平の名演の前にはまるで太刀打ちできず、どうしても「十三人」のスケールダウンした焼きなおしという汚名を雪ぐには至っていない。