『リサと悪魔』

基本情報

リサと悪魔
(LISA AND THE DEVIL)
1974/ビスタサイズ
(2001/4/26 BS2録画)

感想(旧HPより転載)

 イタリアの古い町を訪れた若い娘(エルケ・ソマー)は道に迷い、とある古い館にたどり着く。そこには厳格な盲目の母親(アリダ・ヴァリ)と息子である青年(アレッシオ・オラノ)が不気味な執事(テリー・サバラス)とともに住んでいた。ところが、屋敷に彼女と共に宿泊した旅人たちが惨殺され、青年が彼女を死んだ妻の生まれ変わりだと幻覚していることを知る。遂に母親まで手に掛けた青年は墜落死し、屋敷を逃れ出た彼女は(以下隠します)そこが長らく廃屋であることを知るのだった。そして、家路に着いた飛行機のなかで、彼女が見たものとは・・・

 物語だけをなぞってみても絶対にこの映画の奇妙な魅力について納得させることはできないだろう。これは怪奇映画ではなく、幻想映画と考えるのが正しい。

 正直言ってマリオ・バーヴァとプロデューサーのアルフレッド・レオーネの共作になる脚本的はルーズすぎるのだが、マリオ・バーヴァの怪奇映画的というよりも、幻想的な映像スタイルがカルロ・サヴィナの甘美なスコアとともに織りなす耽美な映像空間にどっぷり浸って堪能するのが正しい見方なのだろう。この映画を見ると大林宣彦がマリオ・バーヴァに心酔するのも無理はないと納得できる。

 実際、白昼夢のように辻褄の合っているような全然デタラメなような物語を明らかに過剰なキャメラワークで引き延ばす演出手法はまるでクロード・ルルーシュのようでもあり、ひょっとすると露骨に影響を受けているのかもしれないが、いかにも70年代初頭のムードを漂わせる映像詩的なスタイルが懐かしくも刺激的でおそらく、一度見ると絶対に忘れられない種類の映画だろう。

 主演のエルケ・ソマーはこのときすでに30歳を過ぎているはずで、さすがに若い娘には見えないが、十分に魅力的。

 もの悲しい衝撃的なラストも忘れがたく、カルト作たるべき資格十分だと思うのだが、その割にはあまり知られていないように見えるのが不思議。

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