『処刑男爵』

基本情報

処刑男爵
(BARON BLOOD)
1972/ビスタサイズ
(2001/4/14 BS2録画)

感想(旧HPより転載)

 かつて処刑男爵と呼ばれた残虐非道な城主は魔女を処刑したことからその呪いを受け、惨い死に様をさらしたうえに、その苦しみが永遠に続く呪いをかけられたと伝えられるオーストリアの古城で、愚かにも男爵を呼び出す呪文を唱えたことから女子大生(エルケ・ソマー)とその男爵の子孫の青年が、蘇った処刑男爵に狙われる。古城を買い取ってかつての凄惨な情景を再現しつつある謎の富豪(ジョセフ・コットン)こそが、処刑男爵に違いないと睨んだ彼らに、男爵を倒す方法を尋ねられた霊媒師は「彼の犠牲者にはその力がある」と告げるのだった。

 いかにも’70年当時の雰囲気を濃厚に発散する女性スキャットによる甘いテーマ曲(でも、傑作)やエルケ・ソマーのミニスカートが古典的怪奇映画の様変わりを象徴するマリオ・バーヴァ監督作品。アメリカで「リサと悪魔」とのカップリングでDVDが発売されたので、そのマスターをそのまま利用した放映と思われる。NHKも本当に物好きな特集(?)を組んでくれるものだ。

 作品の出来としてはとても誉められたものではなく、特に脚本の混乱が当時のB級ホラー映画の一般的水準を超えられなかった原因だろう。やたらと広角レンズやズームを使うのも当時の映画界の悪い風潮をそのまま反映している。しかも、その拙い脚本で100分以上の映画に仕立ててしまうのだから、間延びは避けられない。マリオ・バーヴァ独特のといわれる原色のライティングを配したヒロインと男爵との夜の追いつ追われつのシーンなどに、監督ならではの美学が表明されているのだろうが、今観ると別に目新しくもない。

 拷問部屋の凄惨な雰囲気や、古城の内装などには低予算とはいえ、イタリア映画界の歴史と伝統が十分に発揮されているのだが、物語がその装飾に追いついていないようだ。

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