第三の犯罪 ★★★☆

HOMICIDAL
1961 スタンダードサイズ 88分
輸入DVD


 ブロンド美女は若いホテルマンに偽装結婚を持ちかけ、夜中にドライブスルー教会へ向かうが、突然女は神父を刺殺して行方を眩ます。女は口の利けない老女が住む屋敷に戻り、身の回りの世話をやく元の生活に戻るが、彼女の目的はいったい何だったのか?

 ギミックの帝王、ウィリアム・キャッスルの代表的傑作だが、なかなか複雑なプロットを持つ犯罪映画である。基本的にはフィルム・ノワールのタッチで、ホラー映画ではないのだが、クライマックスになると急にホラー演出になり、気の利いたショック演出を繰り出すのが愉しい。

 ヒチコックの「サイコ」の亜流作の一本だが、さすがにウィリアム・キャッスルならではのトリッキーな作劇と演出で、ヒッチコックのイギリス人らしいアンダーステイトメントな仄めかし演出とは異なる即物的な乾いた演出で、鋭角的なサスペンスとショックを生み出す。映画としての素直な面白さとしては決して「サイコ」に引けを取らない。ラストの種明かしの鮮烈さは語り草で、確か石上三登志は「サイコ」以上と評価していたはずだ。もちろん、種明かしの手口も凄いのだが、その前に殺された車椅子の老女がリフトで階段を降りてくる場面など、モノクロ映画の恐怖表現としては絶品といえるだろう。

 ウィリアム・キャッスルの映画は幾ら残虐な犯罪や異常者の凄惨な暴行を描いても、その手つきに必ず無邪気な稚気が宿っているところが美質であり、そのおかげで単なる悪趣味に堕さないユーモアを獲得することができたのだ。
 なんで日本ではDVDすら出ないのか、不条理だ。

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