感想(旧HPから転載)
岩波映画製作所の制作による羊毛製品のPR映画(「すべての繊維はウールをめざす」!)だが、監督自身が当時の市川崑のスタイルを模倣したと語っているように、奇抜な構図やイメージが連鎖するミュージカル映画で、今で言うならミュージッククリップといったところだろう。主題歌のタイトルでもある映画の題名は若き日の寺山修司によるもの。
”ウルトラの母”ことペギー葉山が主題歌を熱唱し、「わが愛・北海道」でもヒロインを演じる及川久美子、何だかよく判らないけど強烈なキャラクターの久里千春らが賑々しく繰り広げる羊毛にまつわる寸劇(?)が、所々に斬新なキャメラワークを見せながらも、市川崑ほどの様式的統一を見せるには至っておらず、今観ると監督自身が述懐するように、かなり恥ずかしい作品であることは事実であるが、PR映画史には確実に残る珍品ではあるだろう。
しかし、PR映画という日本映画のジャンル自体が今現在一体どれほど解明されているのだろうか?PR映画と記録映画との確執の歴史というものも、今回のNFCの特集上映の密かなテーマなのかもしれない。