THEATER OF BLOOD

THEATER OF BLOOD
1973/ビスタサイズ
(98/12/12 輸入LD)

感想(旧HPより転載)

 演技賞をもらえなかったシェイクスピア俳優(ヴィンセント・プライス)がシェイクスピアの名作戯曲に見立てた趣向で批評家たちに復讐するダグラス・ヒコックス監督のイギリス映画。

 批評家達の眼の前でテムズ河(?)に身を投げたヴィンセント・プライスが河畔に棲むホームレス達に命を救われ、打ち捨てられた古い劇場をねぐらにホームレス達を唯一の観客として血で彩られたシェイクスピア劇を上演し続けている設定はそそるものがあるのだが、ロンドン近辺と思しいロケーションとロケセットによる撮影はあまりに70年代的な侘びしさを露呈して、ホラーの貴公子と呼ばれたヴィンセント・プライスの老化ともども、60年代ホラーの終焉を思い知らせてくれる。

 アフロヘアの鬘を着けて美容師に変装するヴィンセント・プライスなんて笑えるだが、あまり見たくはなかったな。

 60年代のAIP配給によるロジャー・コーマン作など、低予算、早撮りの代名詞のように言われており、実際その通りだったのだが、一応撮影所にセットを組んで撮影している点において、やはり70年代の低予算ホラーとは一線を画しているようだ。「DIE MONSTER DIE!」なんて近年では「月下の恋」や「エビータ」なども撮影された名門シェパートンスタジオを使用しているのだから。

 ただし、マイケル・J・ルイスによる音楽は場違いなほど素晴らしいもので、メロディアスで哀愁に満ちたメインタイトル曲を始め、傑作揃いだ。メインタイトルはシェイクスピアを原作とする旧いモノクロ映画からピックアップしたシーンで構成されているのだが、この部分だけで映画1本分の感動が味わえてしまう。おそらく本国ではサントラ盤なども発売されているではないだろうか。

 あまりにも時代の空気が直截にフィルムに焼き付きすぎて、なかなか素直に楽しむのは難しい。

参考

場違いなほど素晴らしいサントラは、以下で全部聞くことができます!
www.youtube.com
www.amazon.co.jp

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