戯曲レビュー:三好十郎の初戯曲『首を切るのは誰だ』

■「戯曲デジタルアーカイブ」というサイトが存在することを、先日はじめて知りました。戯曲って、図書館で借りないと読めないイメージだったのですが、かなりの名作戯曲が、ここで手軽に読めます。しかも、かなり珍しいものも収録されているようです。
playtextdigitalarchive.com

■なぜか気になったのが三好十郎の『首を切るのは誰だ』という戯曲。短いからですね。30分前後の舞台だったようです。1929年に書かれた、処女作だったようです。でも、非常に平明で読みやすく、今読んでも十分に面白いし、古くないですね。三好十郎は以前にNHKで『浮標』をやってましたが、あれはいくらなんでも長すぎて、挫折したなあ。

■なので三好十郎にはなんとなく良い印象を持っていなかったのですが、これは実に良いです。最初は頭が弱いのかと思われた生徒耕一のいうことに、担任の教師が徐々に同調してゆくあたりが最高で、ついには耕一を崇拝し始める。決して間違ったことは言っていないからだ。その逆転劇が、当時の社会風刺であると同時に、案外今も似たことは起こっていると感じさせる普遍性がある。教員はついに「見るがいい!下積みになっているものが、みんな搾り取られているんだ!本当だ!畜生!」と言い放つ。

■なにしろ、登場人物も少ないし、上演時間も短いので、どこかで上演しませんかね。舞台で見てみたい。

参考

これも三好十郎の原作だったのか。『天狗党』は三好十郎の代表作『斬られの仙太』が原作でした。この戯曲、全部演じると7時間くらいかかるらしい。三好十郎、やっぱり、どうかしてるな。
maricozy.hatenablog.jp

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