戯曲レビュー:総理会見のカンペを書いた記者は誰だ?永井愛の『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』

■2018年に初演されたザ・空気三部作の2作目。2000年の「指南書事件」、2016年の「国会記者会館屋上使用裁判」のふたつの事件をモチーフとして、政権の醸し出す空気に忖度する記者クラブの問題を描く。

■総理の記者会見用Q&Aの原稿が国会記者会館のコピー機で発見された。誰が書いたのか?この件はスクープできるのか?首謀者の保守系新聞の論説委員はとぼけまくり、同じく総理を育てたと自負する、総理と一蓮托生の関係にあるNHKの解説委員(あの人ですね!)はあくまで総理を守ろうと、同じ穴の狢の論説委員とも対立する。

記者クラブのメンバーたちが空気に縛られている(あるいは自ら進んで縛られに行っている)のに対し、ネットメディアの女性記者はあくまでゲリラ的に振る舞い、記者会館の屋上からデモ隊を撮影しようとする。「メディアをうらむな、メディアをつくれ。」イタリアの自由ラジオ運動から生まれたスローガンだ(そうだ)。元気の出るおまじない。既存のマスメディアがみんな政権の意向や支配になびいて口をつぐんだとしても、自由なメディアが在野に乱立すれば、それは可能かもしれない。なるほど、今ならそれができるわけだ。少なくとも技術的にはね。

■ザ・空気シリーズの番外編といった感じで、これはストレートに戯曲を読むよりも、実際の舞台演出を確認しないと、演劇としての真価がわかりにくいかなと感じた。なにしろ、永井愛が自分で演出する事前提で書かれているからね。

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