飯塚事件、恐るべき冤罪の構図『正義の行方〜飯塚事件 30年後の迷宮〜』

NHKのBS1で放送されたドキュメンタリーで、「逮捕」「裁判」「検証」の三部構成で約150分あるので、正月くらいじゃないとなかなか観られないので、一気見。令和4年度(第77回)文化庁芸術祭・テレビドキュメンタリー部門大賞を受賞した大作で、非常に見応えがあるし、わかりやすい。

■そもそも「飯塚事件」そのものをほとんど知らなかったのだが、「西の飯塚、東の足利」と呼ばれる重要事件で、渡辺あやの書いたドラマ『エルピス』のモデルになったことでなんとなく気にするようになったのだが、上記受賞を期に昨年末に再放送されたので観ることができた。というか、こんなドキュメンタリーがあることすら知らなかった。

■1992年、福岡県飯塚市の小学生女児2名が行方不明となり、死体で発見される。しかもその4年前には同じ小学校で女児の行方不明事件があり未解決となっていた(いまだに見つかっていない…)。目撃証言等によって被疑者が逮捕され、最終的に死刑が執行されるが、強力な証拠となった当時のDNA鑑定はまだ未熟な鑑定技術で精度に問題があり。。。

■警察、弁護士、新聞記者それぞれの視点から事件の正義がどこにあるのかが語られるけど、最終的に真実はわからない。当然だけど。事件当時の「MCT118型検査法」DNA鑑定の技術的未熟さは、どうも事実らしく、直接証拠がない事件なので、嫌疑不十分となるべきところ、なぜだか司法側は死刑執行を急ぐ。当時の國松警察庁長官が鑑定人の教授に圧力をかける発言があったとか、なかったとか(どうもあったらしい)。DNA鑑定の全国普及を急ぐ警察庁と、いろいろ舞台裏がきな臭いから、早く闇に葬ってしまおうとする司法当局の策謀(?)が見え隠れする。。。

■いっぽうで被疑者逮捕後に、同様の犯罪が起こっていないことは事実らしく、真実は今も藪の中だ。人間の営みとか人間の作り上げる組織とか建前とか権威とか、あらゆるものが怖くなってくる、本当にあった怖い話なのだ。怠惰な生活を送って、ご近所の人に挨拶もしないような胡散臭い、そこのあなた(やわたし)!なにか事件が起こったときには、真っ先に警察に疑われて、逮捕され、証拠をでっちあげられて死刑台に送られるかもれないよ!てことですね。つまり他人事じゃないわけです。

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