電光超人グリッドマン、まさかの大復活!これがアニメ特撮か?快作『SSSS.GRIDMAN』

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■いやなんとかく巷でグリッドマンが話題になっているのは知ってましたけど、まあアニメだしなあ、なんとなく日常系の高校生活とか描かれても大人にはきついなあと敬遠していましたが、この度一気に観てしまいました。意外にも観はじめると止められなくなったのでした。いや、実際面白いですよ。

■2018年に放映された全12話のミニシリーズで、電光超人グリッドマンを再創造するという無茶な企画。もちろん円谷プロが製作母体だけど、実制作はトリガーのスタッフが当たってます。でも脚本は大ベテランの長谷川圭一だし、怪獣デザインは西川伸司、山口修(オリジナル版のデザイナーで映画美術の大御所です。よく頼んだな!)、板野一郎、丸山浩らのおなじみの面々が担当。そして音楽は鷺巣詩郎というなかなか豪華な布陣。

■監督の雨宮哲はまったく初めてで予備知識無しです。作風としては、言い方は悪いけど、敢えて言えば非常に通俗なウケ狙いだと感じました。シン・ゴジラとかエヴァとかの受けた要素を積極的に受け継いで、怪獣もの、しかも超マイナーな電光超人グリッドマンを初見の若い視聴者にアピールするためにできることは全部やる!という姿勢だと感じました。特にエヴァの作風の影響は大きく、なにしろ音楽が鷺巣詩郎だから、恥ずかしげもなく似てますよ!美少女は当然、やたらと胸やお尻を強調するし、美少女同士でいちゃいちゃするし、恥ずかしいほどの媚び方です!でもね、通俗を極める姿勢はメジャー作品では大事なんですよ。じゃないと大衆に受けないから!

■お話は特に斬新な設定ではなくて、謎の宇宙人が特定の人間の悪意を利用して怪獣を創造する世界の中で、グリッドマンとサポートメカ(人間体は「新世紀中学生」)が対抗し、怪獣が出現するのに、翌日にはみな忘れている不自然なこの世界の成り立ちの秘密が徐々に明かされる。そのなかで、グリッドマン同盟の少年少女と謎の少女、新条アカネの関係が変化してゆく。。。詳しくお話は書かないけど、最終回でついにオリジナルそのままのグリッドマンが登場するというお待ちかねの燃える展開に加えて、孤独という心の地獄を彷徨ったアカネが現実世界の暖かい朝日のなかで「覚・醒」する見事なラストとか、長谷川圭一節全開で、サービス満点。神に棄てられた怪獣少年(?)アンチを、六花やキャリバーやアノシラスがそれぞれ要所要所で救済する展開にも、長谷川圭一の持ち味のいいところが出ていて、泣かせるよね。

■神に否定された、人間の心を持ってしまった怪獣アンチは、彼らとの関わりの中で徐々にヒーローとして再構成されてゆく。このあたりは円谷プロの良心が生きていると感じましたよ。街で困ってそうな子どもを見かけたら、やばそうだから無視...を決めこむんじゃなくて、大丈夫?何か困ってない?と声をかけることができる六花みたいな人間になりましょうね、なって欲しいよね、そうありたいよね、というさりげない教えが組み込まれているのは、長谷川圭一に息づく円谷スピリッツというやつで、そこは見逃してほしくないところ。

■怪獣の表現はきぐるみ怪獣をアニメとCGで再現するというマニアックな趣向で、円谷プロ特撮の再創造といったところか。実際、同様のことはエヴァ庵野秀明が念入りに行なったことでもあり、庵野秀明はミニチュアのビルや車両をCGで再現するよう指示しているから、同じ方法論なのだ。実際、この方法論は今後かなり有望だと感じましたよ。特に「ナナシA」なんて往年のくたくた造形のきぐるみをCGで再現するという倒錯した狙いが正確に実現した見事なキャラクターでした。その中から「ナナシB」が出てきて、その気色悪い動作も傑作でしたね。いや見事。

■個人的にはサムライ・キャリバーさんが好物ですが、声はもう少し渋い濁った声がほしいところですね。最近のアニメって、声が透明すぎて実在感が無いのは困るなあ。あとは、アノシラスの登場はおじさんにはしみじみと嬉しいところ。ああ生きてたんだねえ。オリジナルでもお話もデザインも秀逸だったけど、まさかの復活ですよ。意外にもオールドファンにも優しい作りで、円谷プロ的な良心も感じられる良作でしたね。実際、ヒットしたらしいし、2021年に第二弾『SSSS.DYNAZENON』も放映され、今年の始めには劇場版『GRIDMAN UNIVERSE』まで公開されていますね。これは引き続き全部観ちゃうよなあ。

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