金井克子がヒロインに大抜擢!でもストリッパー役だよ!『暴れ犬』

基本情報

暴れ犬 ★★
1965 スコープサイズ 92分 @アマプラ
企画:辻久一 脚本:藤本義一 撮影:今井ひろし 照明:伊藤貞一 美術:太田誠一 音楽:大塚善章 監督:森一生

感想

田宮二郎の犬シリーズ第4作。このシリーズの藤本義一の脚本って、いたずらに複雑なプロットになっていて、画面に登場すらしない人物の復讐のために手を貸せとか、それもかなり途中から言い出すので困惑する。なんでそんなにお話が迷走するのか?その意味では、特に本作はできが悪い。

■さらに困ったのが、ヒロインを金井克子に演じさせたところで、この時期にこんな大役を任せられていることに驚いたが、演技的にはもちろん未熟だし、そもそも誰だかわかりませんよ。俺たちの知っている金井克子では、まだない。このおへちゃな娘はどこの新人女優?と思って観ていると、歌唱とダンスのシーンで一気に実力が爆発して、なんでこんなに上手いの?これ誰だ?となる。金井克子だから当然なんだけど、普段の演技とパフォーマンスのギャップが大きすぎて、吹き替え?なんて勘ぐってしまうほどだ。どうやら映画初出演らしいけど。

■前作の東京撮影所製作と比べると、明らかに大映らしい泥臭さと田舎臭さがマシマシで、そもそも第一作は京都撮影所製作なのに、妙に乾いてハイセンスだったのは、やっぱり田中徳三の資質なんだな。本作は森一生がレギュラースタッフと取り組んだが、明らかにこれまでとタッチが異なり、浪速芸人をわりと自由に遊ばせつつゆるゆると撮る浪速映画になっている。田宮二郎は相変わらず曲撃ちに熱心だけど、早撃ちのライバルが高木二朗(誰?)という配役の地味さもいかんせん冴えない。大映東映に比べると配役にお金をかけない主義なので、このあたりからジリ貧になってゆくのも仕方ないよね。ホントに配役が弱いもんね。

■ヒロインには草笛光子東宝から呼んでいるけど大した役ではなくて、前作の水谷良重のほうがずっと色っぽかったよね。例によってヤクザの親分が須賀不二男で、これもアドリブ気味な楽しげな大阪弁演技で味がある。そうそう、多分スケジュールの関係でショボクレ刑事の天知茂が出演できず、代わりに大坂志郎が登場するけど、このあたりも弱いよね。坂本スミ子の扱いも完全に浪速の色物テイストで、ちょっとルーズすぎるよね。

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