泥臭さとシャレオツ!犬シリーズ第2弾『喧嘩犬』

基本情報

喧嘩犬 ★★★
1964 スコープサイズ(モノクロ) 89分 @アマプラ
企画:辻久一 脚本:藤本義一 撮影:渡辺公夫 照明:泉正蔵 美術:高橋康一 音楽:土橋啓二 監督:村山三男

感想

田宮二郎の犬シリーズ第2弾で、なぜか東京撮影所の制作となったが、浪速風味満載で小気味いい。前作で刑務所に入った鴨井大介がシャバに出て、土建屋に見込まれて工事現場の飯場の管理を任されるが、ムショで弟分になった小吉が土建屋の悪巧みで殺されると復讐を誓う。。。

■今回は天知茂演じるショボクレ刑事は登場しないが、坂本スミ子はちゃんと登場する。小吉の女房役で良い見せ場をもらっている。殺された小吉を待ちながらひとりぽつんと替え歌を歌っている場面はさすがによくできていて、村山三男の名演出だった。

■ヒロインとなる日陰の女は浜田ゆう子が演じて、これも村山三男と渡辺公夫のコンビが意外におしゃれかつシャープに描く。煽って天井を画角に入れ込んだアングルを多用して、頭を抑え込まれて逃げ場がない男女の情念をスクリーンに閉じ込める。大映らしく陰影の強いモノクロ撮影だが、リマスターが念入りなので、非常に綺麗。お話の舞台は刑務所に飯場という泥臭い映画なのに、キャメラがシャープなので、実にシャレオツに見えるから不思議。

■ただ残念なのは大きな脇役である小吉を演じる海野かつをという役者をよく知らないことで、ここはもう少し上手い人を置くべきだった。悪役の常連である成田三樹夫はすっかり後年の『探偵物語』の刑事を彷彿させる軽妙な演技で快調。さすがにアドリブの台詞はないと思うが、演技のニュアンスはアドリブ演技に近い崩し方。

田宮二郎はますますノリノリで大量にあるコテコテの大阪弁を早口でまくし立てて、圧巻の好演。名演と呼んでもいいくらいだ。もちろん大阪出身なので大阪弁はお手の物だけど、当時の全国区での大阪弁の受け止め方を少し変えるものではなかったろうか。明石家さんまが東京に進出して大阪弁が完全に全国区になる、十数年前の出来事だが。

© 1998-2024 まり☆こうじ