”伏線”は回収しない主義!『巨大目玉の怪獣 トロレンバーグの恐怖』

基本情報

The Trollenberg Terror ★☆
1958 ヴィスタサイズ 87分 @DVD

感想

■スイスのトロレンバーグ山で謎の遭難事故が発生、何者かに引き寄せられるように読心術の姉妹が駅に降り立つ。トロレンバーグ山には謎の動かない雲が発生し、その観測基地があった。その後山に入った登山隊も連絡が途絶え、捜索隊が入山するが、、、トロレンバーグに何があるのか、トロレンバーグで何が起こっているのか!?
■という怪奇映画タッチのSF映画で、英国映画なので、脚本をジミー・サングスターが書いている。もともとラジオドラマがあって、それを映画化したらしいが、お話の設定とか道具立てがなかなか魅力的で、テレパシー能力を持つ若い娘とか、ここで起こっていることは昔アンデスで起こった事件とそっくりだと語りだす国連の科学者とか、山腹で放射線を放ちながら微動だにしない雲の存在とか、首をもがれた死体とか、死んだはずの男が霊能力者を殺しに来たりとか、もう面白そうな道具立て満載で、特に優れた演出ではないものの、一応サスペンスが効いているから、一体最終的にどう風呂敷をたたむのかと第二幕までは相当ワクワクする。
■ところが、第三幕が酷くて、具体的には書きませんが、近年こんなにがっかりした映画はなかった。というくらいに腰砕け。最後にはアレが出てきて、これがまた相当グロテスクなので凄いといえば凄いけど、ミニチュア特撮がほとんどアマチュアの8ミリ映画レベル。昔の学生映画レベルの撮影なので、ぶち壊し。ちょっと褒めるとすれば、スペクトルマン宇宙猿人ゴリ)のヘドロンのあのスケール感がちょうどそっくり。(褒めてないか)ドラマとしては、すべての”謎”を豪快に投げっぱなしにして、「もう雲はこりごりだ」で幕を引く。
■ちなみに、コレどうなるのと興味を引く第一幕の「謎」要素は、正確には「伏線」とは呼びません。ちっとも伏せてないからですね。「謎」を明示して興味を引くのは一種のフックなので、最終的に劇的に消化されても、それは「伏線」ではないのです。「謎」に対して用意されるのは「謎解き」ですね。近年誤用が多いので、以下の通り、名著から引用しておきましょう。

一方伏線というのは、安田清夫著「映画脚本構成論」によると「一つの事件、事実が起きるときに、その事件が起こるのを暗示するようなきっかけを、前もって、それとなく用意しておくこと」である。
舟橋和郎『シナリオ作法四十八章』191頁

「謎」は意識させて興味を惹かないといけないけど、「伏線」は意識させてはいけない、それとなく配置する、こっそりした仕掛けなのです。