実は立派な喜劇映画!小百合版『青い山脈』

基本情報

青い山脈 ★★★
1963年 スコープサイズ 96分 @amazonプライム・ビデオ
原作:石坂洋次郎 脚本:井手俊郎、西川克己 撮影:萩原憲治 照明:安藤真之助 美術:佐谷晃能 音楽:池田正義 監督:西河克己

感想

■おなじみ『青い山脈』の日活版ですよ。でもよく考えてみると、東宝の『青い山脈』って前編しか観て無くて、後編はなぜか観る機会がなかったのだ。ということに改めて気づいた。だから、例の「ヘンしいヘンしい新子様」の件を映画で観るのは初めてだったのだ。特に本作は、青春映画というよりも、明確に喜劇映画じゃないか。

■正直、ドラマとしてはあまり上出来ではなくて、島崎先生なんてちょっと性格がキツすぎて言っていることは民主的なんだけど、言い方に険があるというタイプで、学内が揉めるのも無理はないという感じ。芦川いづみが演じるのに、なぜもう少し愛嬌を入れないのかと訝しくなる。オリジナルでは原節子がもっとニュアンスを含んだ演技でリアルだったけどなあ。

吉永小百合の新子も一方で中途半端で、主役のような主役じゃないような扱い。アイドル映画としてはそれでもよくできているんだけど。実際、溌剌と撮れているからね。相方の浜田光夫も軽くていいし、ガンちゃんを演じる高橋英樹に至っては、随分設け役。

■お話のクライマックスのPTA役員総会も、実は何も決まっておらず、なんのための会合だったのかというものだが、コメディとしては実はかなりよくできている。脚本改稿の趣旨は、短縮して、喜劇要素に集約するということだったようだ。実際、三谷幸喜の喜劇みたいな仕上がりなのだ。

■役員総会には赤牛こと地方ボスをオリジナルと同じ三島雅夫が演じるのが嬉しいし、例の偽ラブレターを読み上げるのが井上昭文というのもなかなかの配役で、コテコテの喜劇演技で笑わせる。他にも藤村有弘、高橋とよとか、左卜全とか、北林谷栄とかお腹いっぱい。特に満を持して登場する北林谷栄が立ち上がって、2つのラブレターが対峙するというよくできた喜劇映画の趣向で、まあ原作通りかもしれないが、楽しいですよね。

■リマスターも実に贅沢でピカピカだし、快作だと思いますよ。


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