本日、10月26日(木)は、藤村志保特集で、メイン上映は「怪談雪女郎」である。トークショーの会場はさながら大映京都撮影所の同窓会状態で、旧スタッフや大部屋俳優の皆さんが駆けつけて、藤村志保もテンションが上がって、サービス満点。しかも、サブゲストは田中徳三監督で、これほど「怪談雪女郎」に特化したトークイベントはかつて無かったに違いない。
藤村志保の口からは、銀色の目のコンタクトレンズを大阪の研究所まで行って特注したこと、クローズアップのライトの熱で眼球に張り付いて、撮影所近くの眼科でとってもらったこと、5段階のメイク(雪女3種、ゆきの婚前と結婚後の2種)をデザインして演じ分けたこと、鈴木晰也撮影所長に「この映画は大映京都の最後の道楽や」と言われたことなどが披露された。今見ると、顔がまん丸で恥ずかしいとも。しかも、自ら立ち上がって雪女のポーズを交えてトークが展開するということは、「怪談雪女郎」という作品に対する愛が感じられて、この映画のファンとして観ていて幸せな気分に浸ることができた。ちなみに、「なみだ川」の妹役若柳菊はその後結婚を経て役者に復帰し、芸名を変えて(奈月ひろ子?)現在も活躍中で、今もお友達だそうだ。
一方の田中徳三監督は、神木が運び込まれる場面はロケではなく、オープンセットで、神木もハリボテであることが暴露され、藤村志保と石浜朗が互いに身寄りが無いことを明かす引いた長廻しのカットは、奈良の若草山までロケに出たこと、引いた画で持たせるためには演技力が要求されること、下手な役者の場合は、アップで繋ぐしかないことなどが語られ、眠狂四郎や兵隊やくざといった暑苦しいものが多かったので、清涼剤になるような素材がやりたかったとも。なお、藤村志保と組んだ作品では、「悪名無敵」がお奨めとのこと。藤村志保がやくざの女親分で、八千草薫がちょっと頭の弱い役を演じて、配役の妙が味わえるらしい。「鯨神」の話題で藤村志保が一時盛り上がったのも貴重な瞬間だった。キャメラマンの宮島正弘が会場にいたらしく、田中徳三が舞台上から気軽に話しかける様子も、いかにもアットホームで京都ならではの和やかさ。
また、二人とも、大映京都の財産は手抜きの無いスタッフワークの熟練にあると力説すると客席が沸くのも、京都ならではの光景だった。
ただ、司会担当の山根貞男の舵取りはあまり芳しくなく、ピントがずれている部分があったと思うぞ。正直、今回の映画そのものに対する愛情や思い入れが感じられないのだ。