嵐が丘 ★★★

嵐が丘
1988 ヴィスタサイズ 143分
BS2録画
原作■エミリー・ブロンテ 脚本■吉田喜重
撮影■林淳一郎 照明■島田忠昭
美術■村木与四郎 音楽■武満徹
視覚効果■中野稔 光学撮影■宮重道久
監督■吉田喜重

吉田喜重による「嵐が丘」の映画化、当然時代劇、しかも美術は村木与四郎(助手は部谷京子、清水剛等々)以下の黒澤組、ロケは御殿場という謎の企画だが、要はフランスと西友との合作なので、海外で通用する黒澤映画のような時代劇を作ろうという意図だろう。吉田喜重ということで、観念的で前衛的な時代劇かと思いきや、そうした営業意図を汲んだ分かり易い、しかも血飛沫とヌードをふんだんに取り込んだサービス満点の映画なので、今更ながら驚いた。

■しかし、演出のテンポは一般的な娯楽時代劇ではなく、芸術作品的な意味ありげなゆったりとしたリズムで物語られるため、正直なところ退屈してしまう。同じ脚本で三隅研次が撮っていれば、エロティシズムと殺陣の面白さの際立つ、100分程度のウェルメイドな時代劇になっていただろう。まあ、当時既に故人だから、五社英雄にでも撮らせておけばよかったのではないか。

■充実期の松田優作だが、時代劇の素養がないから力みが目立つし、田中裕子も今見ると苦しい。むしろ高部知子などのほうが自由に演じて溌剌としている。松田優作古尾谷雅人の対決というクライマックスには感慨深いものがある。両人共に働き盛りに非業の死を遂げている。

■夜空を不気味に照らす雷光の様子などをデン・フィルム・エフェクトがオプチカル合成で描き出すが、特によくできたカットではなかった。

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