コクリコ坂から ★★★

コクリコ坂から [DVD]

コクリコ坂から [DVD]

コクリコ坂から
2011 ヴィスタサイズ 91分 @DVD
原作■高橋千鶴佐山哲郎 脚本■宮崎駿、丹羽圭子
作画監督■山形厚史、廣田俊輔、高坂希太郎、稲村武志、山下明彦 
音楽■武部聡志
監督■宮崎吾朗

■昭和ノスタルジー路線かと思いきや、宮崎駿が息子の吾朗に突きつけた挑戦状である本作、昭和39年に舞台設定をしながら、朝鮮戦争での日本人船員の戦死という事件を背景に盛り込み、反戦テイストなのかと思いきや、大書店の社長が登場して水戸黄門のように事件を解決してしまうという反体制なのか体制よりなのか判別しがたい複雑なタペストリーを描き、お前にこの時代と綾が理解できるのかと難詰しているような映画なのだ。観客は父子の創作における火花の出るような相克をドキュメンタリー的に目撃することになるという変にサスペンスなアニメ映画。
■実際、前半は予想外に快調で、吾朗監督の進展著しい演出力を堪能することが出来る。武部聡志の音楽が非常に上出来で、そのおかげが大きいとは思おうが、弾むように展開する前半部分は単純に観ていて気持ち良いのだ。
■ただ、後半で、主人公の二人に血の繋がりが?という展開はあまりに大時代だし、その顛末も、端的に言ってどうでもいいやという処理の仕方。前述したように学生運動の行く末が、資本家の厚意によって解決されるというのも単純に不愉快な構図だし、ドラマツルギー的にも安直すぎる。このあたりは駿から吾朗への「嫌がらせ」として仕込まれた感もあり、おまえこの本を調理できるのか?と、敢えて単純に撮ればバカにされる本をハードルとして突きつけたというのが真相かもしれない。まあ、ありそうな話ではある。
■そのほかにも主人公のあだなの理由とか、毎日上げる旗の意味とか、LSTという専門用語とか、敢えて普通には流通していない理解しがたい細部を敢えて説明せずにポンと提示する姿勢も挑戦的で、駿から吾朗への挑戦でもあり、観客への挑戦でもある。おれたち(駿や高畑勲)がアニメ作りと組合運動にまい進していたあの青い時代について、わかるものなら分かってみろという挑発がこの映画のテーマであり、吾朗監督は部分的には生煮えではあるものの、非常に充実したアニメ映画に仕立ててみせた。主役の長澤まさみは配役の妙で、お見事。

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