思い出のマーニー
2014 ヴィスタサイズ 103分
Tジョイ京都(SC8)
原作■ジョーン・G・ロビンソン 脚本■丹羽圭子・米林宏昌・安藤雅司
作画監督■安藤雅司 美術監督■種田陽平
音楽■村松崇継
監督■米林宏昌
■一応ミステリー的要素もあるのでまっさらな状態で見たほうが良い映画だが、まあいろんな要素を盛り込んだ映画で、いろんな楽しみ方が出来る映画だ。ファンタジー映画でもあるし、ゴシック怪奇映画でもあるし、百合映画でもある。
■イギリスの児童文学が原作ということで、道具立てが幽霊屋敷ものに似ているのがいかにも楽しげで、湿地屋敷の佇まいは『黒衣の女』そのもの。ただし、それを涼しげに描写するからファンタジーになるが、もっと怪奇映画的に描くこともできたと思う。個人的にはもっと怪奇映画に振った方が好みだが。それでもサイロの場面などにヒッチコック的な意匠を忘れないのは高印象。ここももっとコッテリとサスペンスと怪奇劇を仕込める場面ではあるが、そこは米林監督はあっさり志向。
■前作『アリエッティ』は繊細な表現に力を注ぎながらも宮崎駿イズムに相当引きずられてしまった様子が透けて見えたが、本作は原作が良かったのか、ドラマもかなり練られているし、なあなによりすべてが涼しげで気持ち良い。ジブリの夏休み大作で堂々とレズ映画をやってるのも、なんというか凄い。しかし、これ大林宣彦なら実写で撮っちゃいそうだなあ。
■作劇的には終盤に登場する丸めがねの少女サヤカの存在感が素晴らしく、登場シーンは少ないのに、基本的にはうじうじした重苦しい膠着した物語世界に風穴を開けるユニークな女の子。この子の登場でほんとに救われた感じが滲み出すから、人を変えるのは人との出会いなんだなあとストンと納得させる。このあたりの計算というか、感覚は見事なものだ。