借りぐらしのアリエッティ
2010 ヴィスタサイズ 94分
DVD
原作■メアリー・ノートン 脚本■宮崎駿、丹羽圭子
作画監督■賀川愛、山下明彦
音楽■セシル・コルベル
監督■米林宏昌
■滅び行く運命の小人族と死病をかかえる少年の出会いと別れをいつものジブリタッチで描いた掌編アニメ映画。監督は新人の米林宏昌だが、キャラクターデザインやアニメ表現に宮崎駿テイストが濃厚であり、反面、宮崎駿のような突き抜けた表現が無いため、宮崎アニメの縮小再生産という印象は拭えない。
■特に酷いのが、アリエッティの母親の人物造形と大竹しのぶの配役で、これはどう観ても大きく失敗している。声と演技が大竹しのぶにしか聞こえないのに、キャラクターデザインは魔女のようであり、老婆のようであり、しかも性格的にはカマトトという非常に鬱陶しい存在になっており、端的に見苦しい。父親も三浦友和感丸出しで、違和感が拭えない。ジブリアニメの負の要素が大きく完成度を損なっている。
■アニメ表現的には、これもジブリアニメの負の側面だと思うけど、陰影をつけない平面的な映像設計が拙く、父親の小人が常にライトを携帯しており、影の演出の見せ場なのに、一応やるべきことはやりましたという雰囲気はあるものの、陰影の演出が楽しくて仕方ないといった風情は皆無だ。ディズニーアニメとはそこが大きく異なる。さらに、小人の表現なら、被写界深度を浅くとったように見えるため、背景を大きくぼかすのが定石だが、敢えてそれをしない。全てが平面的な配置でなければならないジブリアニメの呪縛がここでもアニメ表現の完成度を毀損している。
■でも、なかなか棄てがたい魅力があるのも確かで、滅び行くマイノリティとしての小人族の宿命を濃厚に打ち出した部分はまるで香山滋の小説のようでもあるし、とにかく地味な話をひたすら地味なままに語りつくす新人監督の嗜好はちょっと興味深い。キャラクターの演技のつけ方にもまだまだ問題は多いが、最新作の『思い出のマーニー』にはちょっと期待している。