ダークスカイズ ★★★☆

DARK SKIES
2013 スコープサイズ 96分
DVD

■近年流行のパラノーマル心霊ものかと思わせて、実はSFでして・・・という小粋な快作なのだが、SFですよというのはサプライズでもなんでもなく、冒頭にアーサー・C・クラークの言葉が引用されているし、クライマックスのひとひねりも敢えて隠そうとしておらず、まあなんというか、スコット・スチュアートという人は真面目な監督ですね。

■しかし、これはなかなか得がたい快作であって、幽霊屋敷ものの定石を踏まえながら、心霊ならざるものの存在感をかもし出してゆくのは着実な演出だし、真相が一気に心霊からSFへチェンジする後半の解説シーンも非常に痛快。奇抜さに走らないオーソドックスな作劇が心休まる。

■単に怪異現象の恐怖演出だけでなく、家庭崩壊劇としての怖さもきちんと描かれており、職が無くてローンが払えないとか、子供たちの身体に奇妙なあざがあって児童虐待を疑われたりして社会的に追い込まれるのは非常にリアルな恐怖として描かれるから、奇想天外な存在の恐怖が社会的な恐怖でもあることをよく示している。だから、これに対抗するには家族の信頼と結束しかないのだという終盤の主張はステロタイプなはずなのに、説得力を持って心に響く。

■そして、結局のところ、彼らの狙いは思春期の少年の性の目覚めに関する実験だったらしいと匂わせる描写も一風変わっている。幽霊屋敷ものは性的抑圧が裏テーマになることがままあるが、本作もそれを踏襲しているのかもしれない。新手の幽霊屋敷映画の秀作。

■ちょっと備忘として追記しておくと、これ例の尼崎連続変死事件の不気味さと少し通じるところがあって、なかなか侮れない。人間性に対する純粋な悪意、挑戦としての家族崩壊実験は、映画中ではある存在の意図として仄めかされるが、それは決して空想的な実験ではなく、現に日本の下町にアングラな日常として実在する恐怖そのものでもあるのだ。

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