キャプテン・フィリップス ★★★

CAPTAIN PHILLIPS
2013 スコープサイズ 134分
DVD

ソマリア海賊による船長拉致事件の顛末を実録タッチで描く、グリーングラス映画。実際、『ユナイテッド93』とよく似た作りで、事件の顛末を臨場感たっぷりに描く割には、テーマを明確に打ち出さない。そんなの野暮だから察しておくれというところであっさりと映画を打ち切るのだ。

■本作もソマリアの若い漁民たちが海賊に駆り出されるところから丁寧に描いているので、彼らにも感情移入できるように作られており、終幕は確かに胸が痛むが、正直なところポール・グリーングラスのドキュメンタリータッチの(文字通りの)キャメラワークにはもう飽き飽きで、却ってあざとい感じしかしない。逆にフィックスで淡々と撮った方が寂寥感が出るかもね。

■傑作という評判を聞くのだが、どうも特段の作品とは感じなかった。お得意の臨場感と当事者たちの心理描写がきちんと描けているのは確かにさすがなのだが、それ以上のものが無いのではないか。実録とはいえ、作劇の妙が感じられないのだ。でも、脚本を書いているのはビリー・レイで、なんと『ニュースの天才』を撮った才人だ。本来もっと「作劇」のできる人だけど、グリーングラスの意向に沿ったのだろうなあ。

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