ユナイテッド93 ★★★☆

ユナイテッド93 (字幕版)

ユナイテッド93 (字幕版)

  • デヴィッド・アラン・ブッシェ
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UNITED 93
2006 スコープサイズ 111分
TOHOシネマズ二条(SC9)


 2001年9月11日、アメリカ国内の空港を飛び立った旅客機4機が、ほぼ同時にハイジャックされる。前代未聞の出来事に混乱の極に達する航空関係者。そして2機はワールド・トレード・センターに、もう1機はペンタゴンに激突した。その頃、残る1機、ユナイテッド航空93便の機内では・・・

 事件後5年を経過して9.11を直接的に描き始めたハリウッド映画界だが、本格的な第1弾となる本作は、イギリスのワーキング・タイトルが制作している。監督もイギリス人のポール・グリーングラスで、手持ちの流動的なキャメラワークと、有名キャスト皆無の配役で、事件の顛末をドキュメンタルな演出で描き出す力作。事件の実行犯、管制官、軍関係者、93便の搭乗者たちの、生と死を賭けたギリギリの行動を等価に描き出した点は、この監督の腹の据わった演出姿勢に打たれる。それぞれが、各々所与の条件下で精一杯できることを実行するのだが、決して幸福な結果に結びつかない切なさが胸を突く。

 ただ、あのラストの呆気なさは、この事件に対する監督の視点を明確にすることを避けているようにしか思えない。事件の後に蛇足としか思えないエピローグを設けて失敗している映画が多々あるのは事実だが、この事件に対して監督の立場はどこにあるのかを打ち出すためには、事件のその後が必要ではないか。ユナイテッド93便に搭乗した全ての人間の断ち切られる様な最期をそのままの形で何も付け加えずに生々しく提示することを最優先した結果だろうことは想像できるが、結果的にその方法論はそれほど訴求力を持っていないのではないか。

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