めまい ★★★☆

めまい [Blu-ray]
■久しぶりにヒチコックの『めまい』を観た。NHKで放送されたハイビジョンリマスター版で、画質はピカピカの超美麗。案外暗い場面は少なく、基本的にライトが満遍なく当たっているからピカピカになりやすい素材ではある。音響もリマスターしているらしく、重低音もずしんと響く。
■でもこの映画については思うところが多々あり、キム・ノヴァクに魅力を感じないとか、まあそんな話だけど、それほどの傑作とも正直思えないところがある。
■今回はっきり感じたのは、本来怪談話にすべきところをヒチコック先生が一向に怪談には興味を示さない点の不合理だ。全編の三分の二くらいは昔狂い死んだ女の呪いがからむ怪異譚でなければならないのに、ヒチコック先生はロマンチックサスペンスみたいに撮ってしまう。個人的な趣味としては完全な怪談として演出し、最後の最後の鐘楼の上での鮮烈な幕引きを、「怪談と思いきや狂言かと思えばやっぱり怪談」というパターンで締めくくってほしいところだが、それが中途半端。この話を、たとえばヴァル・リュートン製作、ジャック・ターナー監督で作れば強烈な怪談風メロドラマになったはずだが、多分アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの『悪魔のような女』に同様パターンをやられてしまった以上、同じアプローチで勝ち目はないと計算したのだろう。
■でも、誰か敢えて今このお話を堂々と恋愛怪談としてリメイクする者はないだろうか。たとえば黒沢清とか中田秀夫という名が思い浮かぶが...

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