恋 ★★☆

小池真理子直木賞受賞作『恋』を源孝志の脚本、監督でテレビドラマ化したもの。なかなかの意欲作、意欲的な企画だと思うのだが、製作がホリプロというところから推して知るべしのヌルいメロドラマになってしまった。これで主演の石原さとみが活き活きとしていればまだいいのだが、不思議なほど精彩が無いのはどうしたことか。端的に脚本が悪いと思うのだが。

■昭和46年から47年にかけての軽井沢を舞台として、大学の助教授夫婦にひとつの理想を夢見る女子大生が知る、夫婦関係の真実、そして運命的な青春への決別...というメロドラマにも青春映画にもなりうる原作小説が、困ったことに台無しだ。少壮の助教授を演じる井浦新もどうも焦点が定まらないところがあるのだが、夫婦役の田中麗奈は完全にミスキャスト。演技の質的に無理があるし、少女っぽさが残る個性がこの役には不似合いだ。この夫婦がしかるべきしっかりした配役でないとお話の説得力が生まれない。

■演技陣で見所があるのは終盤に登場する斉藤工で、悪魔的な存在感を放つ青年を説得力ある演技で見せきる。ただ、この青年の人物像はあまりにリアリティが無いので観ていてまるで腑に落ちない。イメージ的には明らかに松田優作を重ねているはずだが、『狼の紋章』でも『太陽にほえろ』でもないんだからさあ...謎。

■お話としては、通俗劇として本来もっと面白くなるはずなのに、このコクの無さはどうしたことやら。増村保造のように撮ってくれればいいのに!



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