パシフィック・リム ★★★☆

PACIFIC RIM
2013 ヴィスタサイズ 131分
Tジョイ京都(SC11)

■深海底から続々出現する巨大怪獣に対抗するため、人類は巨大ロボットシステムを構築したが、徐々にその効力を失い、方針転換でお払い箱になる。だが旧式のイェーガーシステムを信ずるレジスタンスたちは生き残りのパイロットたちを香港基地に集結して巨大怪獣の襲撃に備える...

■製作決定時から熱い期待で迎えられた本作をやっと観ることができた。2時間以上3D上映の鑑賞はさすがにきついので、2D版。吹き替え版を見たいのはやまやまやだが...

■端的に言って製作規模はあまり大きくなく『トランスフォーマー』のような桁外れの超大作ではない。撮影はREDEPICで行われ、驚いたことに画角はヴィスタサイズだ。3Dもフェイク3D方式で、お話の舞台も限定的で、スケールの大きな場面はほぼフルCGという、まず予算枠ありきの映画である。もちろん、こんなオリジナル企画は今のハリウッドではリスクが大きすぎるので、この予算ならコケても痛くないレベルに設定されている。

■正直なところ、お話は十分に練られていない。SF的な設定の妙味は色々と見られるのだが、ロボットのパイロット同士が脳神経レベルでコネクトするという面白い設定が十分に掘り下げられていないのは勿体無い。男と女がセックスを超えたレベルで連結してしまうことの意義をもっと掘り込まないと、消化不良感が残る。そのことと次元の裂け目からやって来る怪獣との関係をどう意味づけするのか、そこがドラマの見せ所だが、核兵器で問題解決というのはあまりに工夫不足だし、デル・トロはゴジラの何を理解したのか?と日本の観客なら誰しも突っ込むところだろう。

■さらに、本作はハリーハウゼンとか本多猪四郎などの個人名を阿あげている割には怪獣映画ではなく、あくまでロボットヒーロー映画である。怪獣はあくまでやられ役として登場するだけで、個性や生態がドラマの中に織り込まれていない。なので、怪獣映画独特のカタルシスがあるかといえば、ほぼ無い。デル・トロの資質としてはむしろ怪獣側だと考えていたので、正直なところ少しガッカリした。監督としてはあくまで商業的成功を第一義に、痛快ロボットアクションを狙ったということだろうが、それなら『リアル・スティール』の方がずっと出来は良い。

■映画の本筋は舞台を香港に移してから始まり、香港防衛戦の部分が実質的なクライマックスになっている。複数のイェーガーたちが連携して遠浅の海上で応戦する場面が一番燃える見せ場になっている。その後の深海戦はドラマ的にもVFX的にも凡庸で苦しい。

■CGによる巨大ロボットと巨大怪獣の乱闘という映像表現については、ハイレベルであることは分かるが、キャメラワークやアクション表現がどうもアニメ的だし、正直言って質感がいまひとつ。巨大ロボットの材質の実在感が感じられるかといえば、やはりアニメにしか見えない。ILMの特質もあるだろうが、怪獣のアクションにしてもどうもアニメ的で、「怪獣」らしいかといわれれば、やはりモンスター寄りだろう。キャメラがありえない画角や移動をしてしまうせいで、リアリティの演出を損なっていると思うがなあ。

■と、色々と小言は尽きないが、それでも2時間たっぷりと楽しかったわけで、それでなにより十分。やっぱり、3Dでも観てみたいなあ。

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