スパルタカス ★★★☆

SPARTACUS
1960 スコープサイズ 198分
DVD

■監督がアンソニー・マンから急遽キューブリックに変更になった事件が有名な超大作3時間映画で、実際のところいわゆるキューブリック的な演出はあまり見られず、ある意味職人監督に徹して撮りあげた感じだ。実際、撮影規模も他の3時間映画に比べると小さめで、本編セットにしても、それほど馬鹿でかいものは組んでいない。おまけに、ロケ撮影とセット撮影の照明の具合が全くマッチしておらず、このあたりは超大作にしては意外にも杜撰。

■そもそも、このDVDは画質が残念な感じで、ちゃんとリマスターすればもっとゴージャスなルックになると思うが、これではせっかくの3時間映画のありがたみが味わえないよ。せめて『キング・オブ・キングス』くらいのピカピカのリマスターで観たかったなあ。

■お話のほうも到って単純で、欠伸をかみ殺しながら観るにはちょうどいい力加減。脚本は非常に図式的で、特に奴隷軍団の部分こそもっと実感を込めないといけないはずなのに、まるで実在感が感じられない。対するローマの将軍や政治家たちの方がよっぽどリアルな俗物として描かれ、その人間模様には俗な面白みがある。特にチャールズ・ロートンピーター・ユスチノフのやりとりには時代を超越した人間味が味わい深い。対するローレンス・オリヴィエの非人間的なクラサス将軍の癖の強さは本作最大の見もので、「ローマ的なるもの」の功罪を肉体として体現している。スパルタカスって、どこかで会っていたかな?(冒頭で劇的に遭遇しているのに!)というエピソードは上手いなあ。

■あまり上手くできてはいない映画なのだが、終幕のドラマの集約の仕方は秀逸で、冗長に感じられた部分も綺麗に忘れさせてくれる深い感動がある。ローマに続く道筋に何千人もの敗残奴隷が十字架にかけられているこの世の光景とは思えない壮絶な場面で迎えるラストは、素直に感動したよ。

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