上意討ち 拝領妻始末 ★★★☆

■脚本・橋本忍、撮影・川田正幸、照明・沢田敏夫、美術・辻野大、音楽・加古隆、監督・藤田明二
小林正樹の往年の佳作を橋本忍自身がリライトしたという本格的時代劇。ビデオ撮影とはいえ、なかなか力が入っているのは明らか。リライトで変にベタベタしたものになりはしないかと危惧したが、意外にも上出来だった。オリジナルの映画自体、終盤はどうも構成的に整理不足だと感じたが、本作でもそのあたりの刈り込みが不足しており、むしろこのあたりは大幅に改編しても良かったかも。
■映画版では三船敏郎が演じて違和感が拭えなかった主人公を田村正和が演じて、これは意外にもうまく嵌った。その息子役の緒形直人も生真面目で硬質な演技がアンサンブルとして良好だった。映画版では三島雅夫が演じた家老は橋爪功というのもなかなかの配役。橋爪功はもちろん悪くないが、個人的には三島雅夫のファンなので、これは映画版に譲るなあ。そして神山繁が演じた側用人(?)を北村有起哉が演じるのが本作の見所で、映画版ではやりすぎなメイクで怪奇映画的な役作りだったが本作ではもっと人間的な切れ者に落ち着いており、やはり終盤のクライマックスをさらう。この男の言っていることは、実は案外常識的な妥協案であって、完全に理不尽な内容ではないので、これを拒絶する正和の腹のくくり方にぐっと来る仕掛けが、橋本節でうまい。最期には串刺しになる趣向もバッチグー。
■オリジナルのおもしろいところも残念なところも案外忠実に引き継いで作られたリメイク作だった。良心作だと思うが、若い視聴者にはどううつったのだろうか。息子夫婦の尊い愛に撃たれた義父という設定の無理とその強引な理屈付けの面白さが理解されたのだろうか。

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