大菩薩峠
1966 スコープサイズ 120分
BS2録画
原作■中里介山 脚本■橋本忍
撮影■村井博 照明■西川鶴三
美術■松山崇 音楽■佐藤勝
監督■岡本喜八
片岡千恵蔵や市川雷蔵が演じた暗黒の剣士机龍之介を仲代達矢が演じた宝塚映画製作、東宝配給の時代劇だが、岡本喜八の演出に全く精彩が無く、橋本忍の脚本にも褒めるべき点が見当たらない。
そもそも、片岡千恵蔵版も市川雷蔵版にしても、もともと奇怪千万な原作を十分に綺麗に消化しているとは言いがたく、難物小説なので、今回は橋本忍が如何に料理するかが期待されたはずだが、興行的に不評で続編の製作が中止されて全貌が見えなくなったため、なんとも評価のし難い映画となってしまった。
宇津木文之丞を破った仲代達矢が門下生の復讐を迎え撃つ剣戟シーンにしても、ロケ撮影にいかにもといった風情のスモークを流して撮影しており、大映京都がステージ撮影で満遍なく漂う濃密でクリーミーな霧の中で玄妙な異世界を現出する定番表現に比べると、全く時代劇の艶に欠ける。
やはり、大菩薩峠なら、内田吐夢版の三作目「大菩薩峠 完結編」が突出した傑作だった。