戦略爆撃指令 ★★★☆

COMMAND DECISION
1948 スタンダードサイズ 112分
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戦略爆撃指令 特別版 [DVD]

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■何故か日本未公開の戦争映画の佳作。しかし、戦場や戦闘を描くのではなく、戦略作戦を指揮する基地内の人間模様だけを描く、ある意味異色作。それもそのはず、舞台劇の映画化なのだ。ドイツの新兵器開発工場の3拠点を空爆する極秘のステッチ作戦を巡って、作戦続行を主張する指揮官と反対派の確執が生じ、さらには誤爆が発覚、軍内、対国会の思惑が交錯する中、最後の出撃命令は出されるのか、また間に合うのかというサスペンスを生み出してゆく。

■軍の指揮官がどんな思いで兵に命令を下しているかということが劇的に上手く描かれ、同様のことは日本の戦争映画でもよく登場するものの、本作ほどの完成度のものは少ないだろう。日本映画では前線の兵士たちと指揮官たちが並行して描かれ、どちらも中途半端に終わってしまいがちだが、本作は会議室で戦う指揮官たちだけを入念に描くのだ。一方、冒険的な作戦遂行を危惧する空軍のお偉方のお家事情や思惑といったものが、これまた非常に具体的で説得力のある長台詞で描かれ、圧巻の見せ場になっている。ここは舞台でも山場であったことが伺われる。ブライアン・ドンレヴィの名演でぐいぐい見せる。

クラーク・ゲーブル演じる鉄の意志を持つ司令官は交代させられるのだが、ちゃんとラストはハッピーエンドになるところも当時のハリウッド映画ならではの楽しさ。日本映画でも案外未開拓な分野ではないだろうか。実は、本作も基地内だけでは地味すぎるので、ちゃんと爆撃機の不時着の特撮スペクタクルの見せ場があったりするのだが。

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