悲しみは女だけに ★★★☆

悲しみは女だけに
1958 スタンダードサイズ 106分
KBS京都
脚本■新藤兼人
撮影■中川芳久 照明■久保田行一
美術■丸茂孝 音楽■伊福部昭
監督■新藤兼人

■本作は新藤兼人劇団民藝の舞台用に書いた戯曲「女の声」を映画に焼き直したもので、なかなか観る機会もないのだけど、結構な小品佳作ですよ。新藤兼人自身も好きな作品らしい。当時のキネ旬の批評などを見てもいまいち狙いがはっきりしないとか、タイトルの意味がよくわからないといった風な物言いで、あまり評判にもならなかったようだが、見ごたえはある。

■もともとが舞台劇なので、映画の舞台も尾道の一つの家で、そこへ家族が出入りすることでドラマが構築される。田中絹代京マチ子宇野重吉船越英二小沢栄太郎乙羽信子杉村春子望月優子と豪華すぎる配役も見どころで、もう一度しっかり見直したいなあ。配役だけ観ると超大作かと思うよね。

新藤兼人は「他人の評価はどうでもいいんだけど、僕はとても面白かったんですよ」と『作劇術』で語っていて、お気に入りのようだ。『作劇術』では、続いて松竹大船調に対する批判が非常にユニークなので、引用しておく。確かに、新藤兼人の脚本の特徴が理解できる気がする。

「大船のドラマは叔父さんやら叔母さん、甥まで、出て来る人が多い。しかもその家の向かいに綺麗なお嬢さんがいれば、また出演者が増える。そうやっていれば原稿もすぐに規定の枚数に達するんです。スケッチに継ぐスケッチで話は終わる。(中略)そんなのドラマでも映画でもないというのが、僕の意見だった。」新藤兼人『作劇術』より

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