地震列島 ★★★

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地震列島  [東宝DVD名作セレクション]地震列島
1980 ヴィスタサイズ 126分
DVD
脚本■新藤兼人
撮影■西垣六郎 美術■阿久根巌
照明■小島真二 音楽■津島利章
特技監督中野昭慶 監督■大森健次郎

■随分久しぶりに再見。月刊シナリオ誌の脚本(第3稿)を読んだので、映画も観直してみた。脚本読んで、ちょっと感動したせいですね。実質的な主役は松尾嘉代じゃないかと。
■脚本を新藤兼人に依頼したあたりが異色で、庶民のドラマにしたいという狙いがあったらしい。田中友幸はもう少しスペクタクルな方向性だったが、まあそれもありかなという感触だったらしい。たぶん、製作費の問題もあって田中友幸的スペクタクルではなく、ハリウッドのパニック映画的な舞台を絞り込んだ人間ドラマ主体のものになったようだ。
■でも、主人公の言動は明らかに『日本沈没』の田所博士を踏襲しているし、それは田中友幸の注文だったろう。『日本沈没』と違って、首相や政府首脳は無策であたふたするだけというのは新藤兼人の抵抗かもしれない。
新藤兼人の脚本なので、物語構築には筋が通っているはずで、細部にはリアリティとか何とかで様々な難はあるものの、今回脚本を読んで映画を観直して、いままですっきりしなかった部分がやっと腑に落ちた。新藤兼人の狙いは封建的な「家」制度にまつわるお話だったのだ。主人公は不倫の末に封建的な「家」を出ていこうと決心する。封建的な「家」を否定して破壊しようとしている。一方で巨大地震が物理的な「家」を破壊し、若者たちを抑圧する旧弊な「家」制度にしがみつく老人たちを押しつぶし、若者たちを解放する。離婚を決めた夫婦は決死のサバイバルの中で、「家」制度ではない家族そのものの「家」としての再生を願い、主人公はそのために命をなげうつ。特撮で描かれる物理的な「家」の破壊と、制度としての「家」の破壊のドラマを対峙させているのが新藤兼人の脚本の狙いだったのだ。典型的に封建的な母親を村瀬幸子が演じるが、脚本では家の下敷きになって落命したはず。(映画では孫によって救出される。)
■大森健次郎は既に故人なのが残念だが、かなりよく粘って撮っている。マンションの倒壊場面は美術の凄さもあって今見ても圧巻だし、地下鉄内部のパニックの様も、まあ東宝ならではの密度とリアリティ。ただ、難点は愁嘆場をうまく捌けないことで、終盤の夫婦別れの場面が破綻している。当時の松尾嘉代のポジションから考えると、この配役は無理があり、単に底意地の悪い気の強い女に見えてしまう。実際の脚本での描き方はもっと綾があって、終盤の離婚を決めた夫婦がもう一度家族になるという筋立てが意外と感動的なのだが、演出で脚本の狙いがスポイルされてしまった。終盤の編集をやりなおすだけで、もっと良くなると思うがなあ。勿体ない。
中野昭慶の特撮が意外と良くて、『日本沈没』からの流用カットを削ればもっと良くなったのに、勿体ないなあ。『日本沈没』の未使用カットも大量に使用されるが、新撮影の特撮ショットのほうがミニチュアの精度の向上で素晴らしい出来栄え。旅客機のクラッシュ場面も中野特撮お得意の望遠撮影が大成功しているし、実に充実しており見ごたえがある。最後になんでも大爆発するのは困りもので、これがなければもっと評価されるのになあ。地下鉄の水没もよく撮れているし、濁流から逃げる人々をブルーバックの合成カットで1カット挟んでおけば特撮映画としての格が上がるのに、そんなことに拘泥しないのが、独創的な中野特撮。川北紘一とか佐川和夫ならきっとオーソドックスにそう撮るけどね。
■あと、本編の西垣六郎の貢献も大きいと思う。特撮的なことを自分で意欲的にやってしまうキャメラマンなので、本編の被災場面のリアリティと仕掛けの生かし方はこの人の貢献が大だと思うよ。本編ショットにも炎や煙がかなり合成されている。その指示は中野昭慶のアドバイスもあっただろうが、本編主体だろう。

参考

拙著ですが、『地震列島』については少し厳しく書きすぎたかも、と反省しています。

地震列島』の脚本制作に関する秘話が!新藤先生、それホントですか!

本作にも特殊美術として参加した長沼孝による貴重な記録写真が満載!特撮ファン垂涎の奇跡の書。
東宝特殊美術部外伝上: 模型少年、映画屋になる!?

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