『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』

■”教師によるいじめ”という奇妙な事件として派手に報道された記憶は残っているがその後どんな顛末を辿ったのかは、本書で初めて知った。そして驚愕した。新聞、週刊誌の殺人教師報道はほとんど誤報だったのだ。そして、事件の真相はモンスターペアレントの問題に帰着する。

■読んでいて息苦しくなってくるほどの恐怖感冒頭から立ち込めているのだが、そしてマスコミ、教育委員会、学校管理職それぞれの間違いも相当ひどいものだが、事件の中心人物たるクレイマーあるいはモンスターペアレントの言動の奇怪さには衝撃を受ける。こんな人間が一般社会人として生活をしているという事実に眩暈すら感じる。でも、それに類する人間が結構普通に暮らしていることも経験上知っている。だから余計に暗澹たる気持ちに陥るのだ。

■かねてからモンスターペアレントの中には、相当割合で境界性パーソナリティ障害に類する心理的傾向を持った人が存在するのではないかと疑っているのだが、このケースも実際そんな気配が濃厚だ。著者は敢えて記していないのだろうが、件の両親の、特に母親の虚言癖、妄想、異様な執着はボーダーラインに属するものではないか。しかし、この両親の真の意図は一向に不明なのだ。『黒い家』というサイコパスを描いた傑作小説があるが、それに匹敵する怖さだ。

モンスターペアレントには単に権利意識を履き違えた人だけでなく、こうしたパーソナリティ的な問題を抱えた人も存在することを啓蒙するためにも、是非ドラマ化すべきだ。映画ではさすがに興行的に厳しいだろうが、TBSで2時間ドラマに仕立てるべし。

■それにしても小学校の管理職の無能ぶりは本当に恐怖だ。本当に唖然としたよ。問題となった教師の側にも体罰だけでない何らかの問題点(単に性格が優柔不断というだけでなく)もあっただろうことは本書では十分に語られないので、真相はやはり藪の中なのだが、身内のはずの管理職によって詰め腹を切らされるという時代劇ややくざ映画のような理不尽な落とし穴がこんなところに隠されていたとは!

参考

▼同じ著者によるこちらも必読。井上真央主演の『明日の約束』というドラマの原作になりましたが、換骨奪胎しすぎで、別物になってしまいました。もっとリアルにドラマ化してほしかったなあ。

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