『どーなつ』

■「空獏」に比べると、お話が拡散しすぎる気がするので、いまひとつピンと来ない印象なのだが、個人的にはアメフラシと人工知熊(人工知能ではない!)は別の小説に仕立ててほしかった。人工知熊を通じて記憶が受け渡され、交じり合う奇妙な感覚は非常に魅力的なアイディアなので。

■キャラクター小説のようなジャケットに反して、これはかなり難解なSFである。単純に感動したり、感傷的になったりすることを許さない、熊のように、みかけはファンシーだが、中身は筋肉質で凶暴、ファンタジーというより、やはりSF、なのだな。

■火星をテラフォーミングするために人体改造して火星に乗り込んだ人類が、それゆえ火星人となってしまうというアイディアは魅力的だなあ。それだけで長編に仕立てられそうな気がするが。

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