ヒルズ・ハブ・アイズ ★★★☆

THE HILLS HAVE EYES
2006 スコープサイズ 107分
DVD

■かつて核実験場だった砂漠地帯で、通りかかった白人一家が食人一家に襲撃される・・・

放射線の被曝により人間が食人鬼に変異するという乱暴なアイディアは「ノストラダムスの大予言」でもおなじみだが、本作のほうがその扱いに賢明さが感じられる。アレクサンドル・アジャは、単に悪趣味でこうした物語を撮っているわけではなく、アメリカ文明社会のあり方の欺瞞を風刺するために、こうしたアイディアと物語構成を採用している。本作は、ホラーでも、スプラッターでも、スラッシャーでもなく、むしろ西部劇に近い。特に、終盤の大逆襲の場面は、音楽もあいまって、完全にバイオレンスな西部劇だ。

■食人一家の描写には差別的な意図はなく、むしろアメリカ社会が隠してきた、知ろうとしなかった無残な現実をベースにしつつ、アメリカの影の姿である食人一家のバイオレンスを、結局は白人一家の凶暴さが凌駕するという、カタルシスと皮肉のきいた展開には軽く唸った。ウェス・クレイヴンのオリジナル作は未見だが、終盤の核実験場の跡地集落の場面は、リメイク版の新工夫らしい。

■謎の原題の意味がわかりやすく示されるのも親切ですね。



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