墨東綺譚 ★★★☆

■脚色・菊田一夫、潤色・堀越真、演出・佐藤浩史、美術監督・毛利臣男、照明・吉井澄雄、音楽・桑原研郎
■1993年の帝国劇場公演。劇場への招待用に実質2時間程度に編集されているため、大装置を自在に動かす舞台転換や枝葉のエピソードがカットされている。玉の井の建物が密集する空間を巧みに再現する美術装置の全貌を見ることができないのは残念だが、主演の浅丘ルリ子のお雪が予想以上に上出来で、何しろ約20年前の舞台だから、ルリ子もまだ若い(?)のだ。この舞台では、同じく荷風の「踊子」のパートのヒロインもルリ子が演じており、女の持つ聖女性と魔女性の不思議さを描く趣向だ。
■お雪の腐れ縁のヒモを演じるのが大映出身の青山良彦というのも、なんとも。正直、あまり上手いとは思えないのだが。抱えた私娼3人がすべて不本意な成り行きで散り散りになってしまう不運を嘆く抱え主の藤間紫が貫禄を見せる。
■確か、豊田四郎の映画版も観ていたはずだが、こちらのほうが単純に面白い気がする。

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