■とにかくミニチュアワークの精細さが手に取るように鑑賞できるのがありがたいし、痛快だ。それでいて、一昔前のネガテレシネによるデジタルリマスター版のようにビデオ調の画質ではなく、ちゃんとフィルムの質感が生きているし、暗い場面、薄暗い場面の照明効果もきちんと再現している。特に本作では特撮場面のほとんどが明るいデイシーンで展開されるので、高精細の痛快さも格別だ。
■しかし、この映画については、初見のときから違和感があり、映画のテンションが福岡ドームのシーンで最高潮に達して、その後が尻すぼみに見えてしまうし、主人公一家がどこに住んでいるのか、位置関係と移動感が自然に表現されていないので、後半にサスペンスが発生しないのだ。伊原剛志がいきなり福岡に出現するのも異様だし、その後東進するギャオスを追って長峰が東京に近づいてくるのはいいとして、伊原剛志がどこにでも突然出現するので、位置関係と距離感が腑に落ちないこと夥しい。だいたい、独り者とはいえ、神出鬼没すぎるのだ。
■こんなことを言っているのは私くらいなので、普通は気にならないのだろうが、小野寺昭と藤谷文子の家はいったいどこにあるのだろうか。東京のどこかの下町で、東京タワー周辺で避難指示が出されても避難せずに呑気そうに酒を飲んでいられるくらいの場所ということになるようなのだが、それっていったいどのあたりだ?「帰ってきたウルトラマン」であればグドンとツインテールのもたらした東京の疎開感覚が簡潔かつリアルに表現されていたものだが、この映画の後半の緊迫感の薄さは、やはり問題だろう。