湯殿山麓呪い村 ★★★

湯殿山麓呪い村
1984 ヴィスタサイズ 112分
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原作■山村正夫 脚本■荒井晴彦佐伯俊
撮影■山崎善弘 照明■加藤松作
美術■小川富美夫 音楽■林光
監督■池田敏春

■この映画を傑作とか言ってしまうと、完全にひいきの引き倒しになってしまうが、十分にカルト映画の資格はあると思うぞ。いや、実際、変におもしろい映画になってしまっているのだ。

■本来ならもっと怪奇映画的に、あるいは横溝映画的に作ることもできたろうし、たとえば野村芳太郎などが撮れば、ちゃんとミステリーとしても怪談としても立派な映画になった可能性もあるし、池田敏春としても、もっと怪奇映画的に撮ることもできたはずだとは思うのだが、何しろメイン脚本が荒井晴彦なので、ミステリーにも因縁怪談にも興味ない感じで、駄目男がすべてを失うメロドラマ仕立てになっているのだ。多分、因果怪談の部分は佐伯俊道が書き、永島敏行と永島暎子のメロドラマは、荒井晴彦が書いたのだろう。

■しかし、池田敏春も怪奇因果怪談劇に属する部分は、配役も含めて滑稽なタッチで描き、怪談風にしようとはしていない。一方、W永島による不倫腐れ縁劇のほうには力が入り、いかにも80年代的なロング目の長廻しを基調として、男女の情感にこってりと迫る。実際、この永島敏行の演じる主人公の不真面目さと駄目さ加減は驚愕に値するほどで、演技の質も含めて、ちょっと凄いことになっている。永島敏行という決して巧いとはいえない役者の奇妙な存在感が、池田敏春の演出でやばい化学反応を起こしているのだ。池田敏春は、怪奇ミステリーのプログラム・ピクチャーを撮ろうと考えたのではなく、ロマン・ポルノを引きずっている。

■それにしても、因果怪談として無理やり回収しようとするラストは、もっと語り草になってもおかしくない名シーンだ。W永島の、いったいいつの時代の話なのか?というメロメロの結末には絶句しながらも、正直感動しましたよ。一方の、仙道敦子の結末は、これぞ池田敏春という見たことも無い突き抜け方で、唖然としながら、不思議な開放感に包まれる。ほんとに得体の知れない映画なのだが、池田敏春の異能ぶりはよく発揮されているし、その異能は映画に祝福されていると実感する。

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