ドリーム・クルーズ ★★★

DREAM CRUISE
2007 ヴィスタサイズ 88分
DVD
原作■鈴木光司 脚本■高山直也、鶴田法男
撮影■さのてつろう 照明■森谷清彦
音楽■遠藤浩二 美術■斉藤岩男
視覚効果■橋本満明、光学太郎
監督■鶴田法男

アメリカのケーブルテレビ用に製作された”マスターズ・オブ・ホラー”シリーズの第2シーズンの一編だが、日本では劇場公開されたもの。あまり芳しい評判は聞かなかったが、案外良い出来で、昔懐かしい、愉しい怪談映画になっている。原作通りとはいえ、タイトルがダメで、「怪談呪いの航海」とか「怪談海霊の呪い」などとしてくれると、非常にしっくりくる。土曜ワイド劇場で円谷プロが作っていた単発怪奇ドラマを、怪奇映画としてレベルアップしたという感じだ。怪談映画には欠かせない悪役を石橋凌が粘着質に演じているのも素晴らしい。この残忍そうな男の恐怖を描くのかと見せておいて、東京湾上で超常現象が起こり始めるあたりから、もう眼は釘づけだ。

■物語は極めて王道の怪談映画で、東京湾の夜の海に漂うクルーザー内で、3人の男女が繰り広げる愛憎劇が、次第に怪談映画になってゆくところが、ゾクゾクする見どころ。海からやってきた魔物によって石橋凌が遂げる奇怪な変貌も素敵だし、いよいよ満を持して登場する海の亡霊の描出も、元祖Jホラーの開祖だけあって、照明効果とデジタル合成を駆使した巧みな工夫で、海中にたゆたう藻のようなイメージを醸し出して、新鮮味がある。視覚効果はライトハウスが担当し、かなりの数の合成カットを仕上げている。夜の東京湾に浮かぶ緑の亡霊というイメージも、まさに「怪奇大作戦」、あるいは「美女と液体人間」のラストのようでもある。

■漆黒の闇の中に浮かぶクルーザーという映像表現としては難しいテーマなので、十分に描き切れていないところもあるし、主人公の弟の登場も、二度繰り返してはダメだろうと思うが、醜悪な海の亡霊を叩きのめそうとしたら、実は木村佳乃で、という怪談映画のお約束シーンも、非常に上手い編集で見応えがある。その他の山本迪夫風のショックシーンもことごとく成功しており、実に楽しい。特殊メイクも原口智生が監修して、怪談映画には欠かせないスタッフを集めている。

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