千姫御殿 ★★☆

千姫御殿
1960 スコープサイズ 97分
京都駅ビルシネマ
脚本■八尋不二
撮影■竹村康和 照明■中岡源権
美術■内藤昭 音楽■斎藤一郎 
監督■三隅研次

■以前から観たいと思っていた映画なのだが、マキノ雅弘の「千姫と秀頼」に比べると数等劣る。正直なところ単調で、演出の切れも無い。「千姫と秀頼」の激烈なパッションの発露が時代劇的なアクションにつながるという美味しい見せ場も無く、三隅研次の演出は大作映画をそつなくこなすに止まっている。

■とにかく脇役が豪華で、大映としても相当力の入った大作だったのだろう。滝沢修志村喬山田五十鈴という大物俳優に、まあこれは大映専属だけど中村鴈治郎も登場し、無駄に豪華な配役だ。内藤昭の美術はスケールが大きく、銀箔を多用した壁面の意匠が印象的だ。照明が中岡源権だが、画調はいわゆる大映京都スタイルの陰影の強いものではなく、かなりフラットで、山本富士子を美しく撮ることに集中している。ルックの質感は大映というよりも東映的である。

■終盤は山本富士子本郷功次郎の悲恋に収束してゆくのだが、詰め腹を切らされる本郷にしても、あまり悲壮感が盛り上がらず、山本富士子千姫にしてからが、演技的な深みが感じられない。女性映画としても中途半端だし、活劇としても冴えないし、良いとこなしだなあ。

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