千姫と秀頼  ★★★☆

千姫と秀頼
1962 スコープサイズ 85分
DVD
原作■三上於菟吉 脚本■安田重夫、高橋稔
撮影■山岸長樹 照明■ 安田与一
美術■鈴木孝俊 音楽■斎藤一郎 
監督■マキノ雅弘

■愛する秀頼を父と祖父の率いる徳川軍に攻め滅ぼされた千姫は徳川憎しの心から、徳川の威信を傷つけるため狂乱を演じるが・・・

■秀頼は特別出演の錦之助が演じて、15分くらいで消えます。その後は平幹二郎菅貫太郎という新劇畑の濃い面々が、マキノ演出のよろしきを得て、短いながらも名演を見せますよ。実際、マキノ演出は全編さえ渡ってます。平幹二郎菅貫太郎も、映画のキャリアのなかでは最高の演技を見せる。

■特に美空ひばり演じる千姫が徳川の紋を自慢する大阪商人を切り捨てて、狂ったように走り出すや、下々の者たちが逃げ惑うさまを、延々と移動ショットで追う場面、引き続き何の罪もない南方英二まで配下によって無礼討ちされる凄惨な見せ場の、ため息が出るほどの美しさは、マキノ演出の真骨頂だ。クライマックスの、徳川家康らの前で、薙刀を振り回す場面も、人が死ぬわけでもないのに、時代劇のアクションとしては最高峰の演出だし、もう時代劇の醍醐味ここにありといった風情です。

■なにしろ美術は東映京都の大作担当鈴木孝俊なので、セットは妙に巨大で、江戸城内の俯瞰カットなど見事な作画合成も用いながら、雄大なスケール感を生み出します。クライマックスの江戸城内の広大な板間なども、俯瞰のフルショットがもの凄い説得力を持つのも、この時代の東映京都の底力。とにかく悠々と堂々と俯瞰目の画角ですべての運命を描き出す山岸長樹のキャメラワークの流麗さにも陶然とする。

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