『こんな話を聞いた』

こんな話を聞いた (新潮文庫)

こんな話を聞いた (新潮文庫)

■全18話のうち、個人的には「銃声」「案内人」「影法師」「鴨狩り」などがお気に入り。アイディアとか着想の新規さではなく、話術の妙で感心させる短編集だ。特に「影法師」の”グ、グイ”のひと突きは傑作だ。
■その他の諸作も水準はそろっていて、「靴が鳴る」とか「猫婆さん」といった、ちょっとグロテスクで泥臭い作品も技巧的には秀逸である。短編集の最後には幻想譚が置かれることが多い気がするが、「街のどこかで」もまさに不思議な幻想小説。ただ、あまり良い出来とは思わないが。

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