『空の中』

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

■結構ハードなSFだと思うのだが、高度2万メートルの成層圏に隠れ棲む巨大な生命体とのファーストコンタクトを描いた大人ライトノベル。前半はすこぶる快調なのだが、「セーブ・ザ・セーフ」の真帆の登場あたりから、どうも失速する気がする。真帆という女子高生の個人的な(未熟な)復讐に大の大人たちが振り回されすぎる印象で、説得力に欠ける。クライマックスの会議から屋上へ連なる見せ場の設定も、着想と設定の気宇壮大さとバランスがとれていない気がする。
■白鯨と呼ばれる謎の生命体の描写は非常にユニークで、バルンガやスカイドンが引き合いに出されるのも楽しい。でも、「海の底」の方がやっぱり傑作だったなあ。

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