大仏開眼 前編・後編  ★★★☆

大仏開眼 前編・後編
2010 ヴィスタサイズ ?分
NHK録画
脚本■池端俊策、音楽■千住明、美術監修■西岡善信 演出■田中健二

■肝心の(?)大仏など、後編の10〜20分程度しか登場しないという、古代政治闘争ドラマ。池端俊策が心行くまで作劇魂を燃やした、熱い熱い傑作ドラマだ。平城京を舞台とした吉備真備吉岡秀隆)と藤原仲麻呂高橋克典)の対立を軸に、前編、後編ともに政治と理想を巡る激しい葛藤が展開して、主演陣も見ごたえある演技合戦を見せる。ことに、前半終盤の二人の対立は、脚本、演出、演技ともに充実しきった名場面だ。

■政治の実権を争う旧貴族と新興の藤原氏の苛烈な政争が主軸で、吉備真備がその間に立って戦争を回避するために”理性”による解決を求め、特に野心家藤原仲麻呂と激しく対立する。前半の藤原広嗣の乱に乗じて政治の実権を簒奪しようと企む仲麻呂に、藤原一族は一千年先まで逆賊の汚名を着る事になるぞと理詰めでぎゅうぎゅうとやり込める場面は、吉岡秀隆の”善魔”としての底力が300%発揮された凄い演技を見せる。いまこれだけの台詞を書けるのは池端俊策くらいだろう。というか、久々に池端俊策の本領発揮というところだろうか。

■後編にも仲麻呂に京を追放され、遣唐使から再び戻ってきた吉備真備が権勢に奢る仲麻呂の前に幽鬼のように現われて、藤原氏の政治の腐敗を訴えて、政を正さなければ何度でも舞い戻って来ると宣言する場面も、吉岡秀隆の凄みで見せ切る。仲麻呂の末期がNHKの不得手な活劇によるものになっているのは、構成上の失敗で、せっかくのクライマックスが弱点になってしまたのは惜しい瑕だが、このレベルのテレビドラマが作れるのは、今やNHKだけだ。テレビドラマはNHKが一人勝ちという感じだ。

■女優陣では江波杏子石原さとみが突出しており、江波杏子は異様な髪型でキャラクターを表現してしまったところが凄いし、石原さとみのアイドルとしての完璧な存在感には感動した。演技力も凄いよ。石原さとみ最強伝説の始まりだ。

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