■原題は探偵役のD・サザーランドの名前なので、本格的なハードボイルド映画の構えだが、実質的にはNYのコールガール、ジェーン・フォンダの都会人の不毛と孤独を描くことがテーマとなっている。もっと扇情的な風俗劇かと思っていたのだが、非常に都会的で叙情的な佳作である。なにしろ、ジェーン・フォンダが精神科医に延々と独白する様子がかなり長く差し挟まれるという、まるでウッディ・アレンのような構成が、映画の狙いを明白にしている。
■特にマイケル・スモールの楽曲が傑作なので、サントラが欲しいところだが、輸入版しかないようだ。60年代映画の尻尾を感じさせる名スコアだ。
■なぜか異様に入念にリストアされた放送原版が使用されており、本国でもそれなりに重要な作品と認識されているのだろう。おかげで、撮影監督ゴードン・ウィリスの凄さがよくわかる。特にハリウッドのステージ撮影と全く異なる理念に基づく照明設計が凄い。アベイラブル・ライトを基調に、陰影の深い映像を彫りこんでいる。いまどき、こんなにフィルムの味を生かしきった映画撮影は見られなくなってしまった。