その街のこども  ★★★☆

その街のこども
2010 ヴィスタサイズ 75分
NHK録画
脚本■渡辺あや、音楽■大友良英、演出■井上剛

阪神・淡路大震災15年の節目に製作されたスペシャルドラマ。”夜はクネクネ”風に(?)深夜の神戸の街を歩く森山未来佐藤江梨子が、子供の頃神戸の震災で味わった心の痛みを次第に吐露する様子をオールロケ撮影で描いたスケッチ風の中篇ドラマだが、予想以上に良い出来で、今年のテレビドラマとしては、ベストの部類に入ることだろう。

■特に優れたドラマが構築されているわけではないが、R・リンクレーターの「恋人までの距離(ディスタンス)」を想起させる恋愛(一歩前)映画としてもなかなか魅せる。ラストの幕切れの鮮やかさも、今時のテレビドラマや映画ではなかなか味わえない、ここちよく切ない余韻を残す。

■ただ、気になったのは終電後の街中なのに、駅は煌々と灯りをつけているし、街の風景に深夜の時間感覚が感じられないことだ。終電後から早朝5時46分に東遊園地で黙祷を捧げるために歩き続けるのだから、冬の深夜の空気感がもっと映像として強調されてもいいはずだ。実際、撮影が行われたはずのこの冬はかなり寒かったのだから、台詞だけでなく、映像で空気の凍てつきが表現されてもよかった。神戸の夜景がやたらと綺麗なのはいいが、深夜の設定だけに違和感が残るのだが、神戸の深夜はあんなに明るいのか?


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