暗黒街の顔役  ★★★★

暗黒街の顔役
1959 スコープサイズ 101分
日本映画専門CH
脚本■西亀元貞、関沢新一
撮影■中井朝一 照明■森茂
美術■阿久根厳 音楽■伊福部昭
監督■岡本喜八

■この映画を観たのは、高校生時代で、モノクロテレビ(放送自体はもちろんカラーだが)で深夜映画劇場だったと思うが、こんなに綺麗な状態で観られるのは、嘘のような気さえする。先日の「顔役暁に死す」はピカピカにリストアされたデジタル臭が香る原版だったが、こちらはもっとフィルム寄りだ。イーストマンカラーの発色の限界もそのまま。ただ、原色部分の発色が強調されている気がする。プリント用フィルムではここまで鮮やかではないだろう。というか、うちの液晶テレビの特質だろうか。

■映画の出来もすこぶる良く、傑作。後年の東映ヤクザ映画はもっと湿り気を帯びているが、岡本喜八の全盛期は、同じ鶴田浩ニが演じてももっと乾いている。特に平田昭彦とコンビで外国人カジノを壊滅させる場面は東宝映画史上の名場面だ。平田昭彦のエピソードの完結の仕方も見事で、殺人事件容疑者(宝田明)の目撃者の少女の最期の場面と同様、脚本の上手さに舌を巻いた。

■後に「仁義の墓場」で映画化された実在した狂犬ヤクザ石川力夫のエピソードが途中に盛り込まれ、ラストの鶴田浩二の台詞も有名な三十年のバカ騒ぎの句であるというのにも驚いた。この時期の田中友幸のアクション映画が実話に基づいていたということに軽くショックを受けた。足の不自由なこどもというあざとい設定を扱いながら、情緒的な部分と軽妙な演出が、絶妙にブレンドされ、紛れもない傑作に仕上がっている。やっぱり、岡本喜八はこの頃の作品が頂点だと思うよ。

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