のだめカンタービレ 最終楽章 前編
2009 スコープサイズ 121分
KBS京都録画
原作■二ノ宮知子 脚本■衛藤凛
撮影■山本英夫 照明■小野晃
美術デザイン■あべ木陽次 音楽■服部隆之
VFXプロデューサー■大屋哲男 VFXスーパーバイザー■佐藤敦紀、ツジノミナミ
監督■武内英樹
■千秋はルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者となるが、楽団は崩壊寸前のガタガタの状態だった。楽団メンバーとの確執を乗り越えて楽団再建に努力する千秋は、就任公演のチェレスタにのだめを呼ぶが・・・
■テレビ版はなんとなく横目で眺めている程度で、ただ、上野樹里の漫画演技が絶妙なのは認識していたが、映画版の本作では、お馴染みの漫画演技(怪演)がさらにVFXで誇張されており、もう単純に可笑しい。日本映画のコメディとしては近年傑出しているかもしれない。とにかく上野樹里を観ているだけで、何の不満も無く満足できる。ほんとにユニークと呼ぶに相応しい女優だ。個人的には、付き合いたいとか、結婚したいとかいうタイプではないが、存在感の振幅の激しさを眺めているだけで、心底幸せな気持ちにしてくれる。私は正真正銘の”ジュリスト”である。
■前編の主役は玉木宏で、むしろ上野樹里は後編で活躍するようなのだが、それでも千秋との初競演に舞い上がって、お馴染みの”変態の森”で乱舞する場面は、CGアニメとの合成が出色で、傑作な見せ場となっている。フランスまで行って、よくぞこんな馬鹿なことをやって来たものだと感心する。テレビ版でも山口紗弥加と演じた光線合戦も、映画版では本家本元の日本エフェクトセンターがアニメーションエフェクトを手掛けて、ばかばかしさもディテールアップされている。
■ドラマ的には単純なものだが、本場ヨーロッパで着実に頭角を現してゆく千秋に、もう追いつけないのではないかと自信を喪うのだめの姿は、ドラマ版、或いは原作の予習が無いと十分に心に届かないかもしれない。
■撮影は「アマルフィ」とセットでフジテレビと契約したと思しい山本英夫で、とにかく現地ロケの被写体の質感が高いので、映像的にも見栄えがあり、悪くない。VFXの大屋哲男も「アマルフィ」組で、「アマルフィ」はのだめの前座映画だったということだろうか。
■製作はフジテレビ、講談社ほか、制作はシネバザール。