カールじいさんの空飛ぶ家 ★★★★

UP
2009 ヴィスタサイズ 109分
ユナイテッドシネマ大津(SC3)

THE ART OF カールじいさんの空飛ぶ家
ピクサーのCGアニメ最新作で、監督はピート・ドクターとボブ・ピーターソン。快調な音楽はマイケル・ジアッキノ。物語は、完全に大人向けで、こどもも飽きさせないようにキャラクターとアクションにいつもながらの工夫を盛り込んでいるが、ドラマの核心部分は大人向け、というか年寄り向けだ。「UP」という原題からも連想されるように、回春映画ともいえるだろう。もちろん、性的な表現は無いのだが、人生の黄昏に差し掛かった老人が再び活力を取り戻して冒険を始めるというお話だ。
■とにかく、導入から省略を大幅にきかせながら主人公の老人とその妻の夫婦の人生が描き出されるところから涙腺が緩みっぱなし。後に妻となるエリーとの出逢いの場面は、短いエピソードのなかにエリーのキャラクターの魅力と人間味を強烈に描き出して傑作だし、大量の風船を括りつけた夫婦の思い出の家がアメリカを飛び立ったと思ったら、あっという間に目的地(の付近)に到着する展開の速さも驚異的。実質的なドラマがそこから始まることになるのだが、人語を話す犬や謎の巨大怪鳥といったサブキャラクターたちがギャグとサブエピソードのコテコテの盛り込み具合は、今やピクサーお家芸だ。「ボルト」にに引き続き、犬好きには堪らん映画でもある。
■例えば最近の「ATOM」と比べると、CGによる皮膚表現や美術装置の材質表現や古びた質感の描きこみ、演出意図を明確化する丹念な照明効果など、技術水準の高さは一目瞭然。あまりに現実味のある質感なので、超絶技術で撮られた人形アニメのように見える。
■一言で言えば、もうひとつの「グラン・トリノ」といえるだろう。”大きなトリ”が重要な役割を演じるのも妙な暗号か。